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author
細川又三良 (ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。
art direction & design
Instant Design Works
photograph
matasaburo EXHIBITION |
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| 061.『キコのこと(後編)』 |
| Date: 2006.11.02 |
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(※『前編』のつづき)
六畳の居間に通されて二人掛けのソファに座らせられる。
本当に何もないんだよね、と出されたのは二本の缶ビール。とりあえず、乾杯するけど、キコは隣に座ろうとしない。
「座ったら?」
と言っても、うろうろとして落ち着きがない。
まったく、今さら何を警戒してるんだか、と笑いながらビールを飲む。しかし、一瞬の隙を逃さない。油断したキコの腕を取って、強引に引っ張ってソファの前に座らせる。
それでもキコはふざけようとするから――後ろから抱き締めて服の上から胸を優しく鷲づかみにする。
「柔らかいね、キコのおっぱい」
ん、とキコは小さく息を止めて、両手で僕の手の動きを止めるようにつかむ。
焦ることも、がっつくことも、慌てる必要も何もない。身体を密着させてそのまま女体の柔らかさとキコの匂いを楽しみながら、初めてセックスをする前の奇妙な空気を味わう。
後ろからキコの首筋に軽くキスをする。
ギュッと全身の筋肉に力が入るキコ、素直な身体だなって思う。すでに両手の力は弱くなっていて、僕の手が服の中に侵入することを許してる。
ブラの上からなぞるように乳房を触り、片手でブラのホックを外して、下から持ち上げるように乳房を愛撫する。
身体の割に少し小ぶりな乳房、感度は良好で指が乳首に触れるとぶるぶると小さく身体が震えた。
「ね、キコ、こっち向いて」
振り向いたところで口づけを交わす。
舐めるようにいやらしく、でも、大切に、柔らかい唇の感触を確かめるような長いキス。
口づけだけで僕のペニスははち切れないばかりに大きく膨らんでいた。キスをしながら、ベルトを外しファスナーを降ろして窮屈な空間から解放させてやる。
キスに夢中になっているキコの手を取ってペニスを握らせる。キコの手は、すぐ後に自分の身体の中に入ってくる異物の大きさを確かめるようにゆっくりと上下に動かした。
「キコ、して」
ソファに浅く掛け直して、腰を前に突き出す。
キコはソファの下で、僕の両脚の間にひざまずくように座って、チロチロと舌の先でペニスの根本から亀頭まで舐めあげて、散々焦らした後に、ぱくりと口の中に含んだ。
「うわ、気持ちいい……キコ、ホントに気持ちいい」
愛情が感じられるフェラチオをされると、いいこいいこと頭を撫でたくなる。一生懸命尽くしてくれる姿が、ペニスを一層太く長くし、大切にしたいという気持ちが募ってくる。
キコとの初めてのエッチなのに、優しい舌使いに病みつきになって、十分ぐらいたっぷりと奉仕させてしまう。
今度はキコの番だよ、とソファに上がるように言うと、キコは僕の頭に両手を回して、強く抱き締めて、ねっとりと唾液を交換するようなキスをした。
「……あのね、もう、欲しくなっちゃった」
唇を離して、耳元で囁くように言う。
右手をキコのスカートの中に伸ばす。下着の端から中指をねじ込ませて、キコの女性器に触れると、たっぷりと蜜が溢れて乱暴に指を動かすと、静かな部屋の中でくちゅくちゅといやらしい音が静かに鳴り響いた。
「すごいね、いつから濡れてた?」
キコは答えようとせずに唇を求めた。あごを引いて、キスから逃げる。
「あ、階段でお尻を触ってからでしょ?」
そう言うと、キコは首を振って、
「……電話してるときから」
とクスッと笑ってキスをした。
口づけを交わしたまま、キコの身体を押し倒す。下着をスルッと脱がして、両脚をいっぱいに広げさせて、ペニスの先を合わせてゆっくりと腰を突き出した。
半年間、誰ともしてないことは入口のきつさでわかった。
「痛い?」
「ん、ちょっと」
ペニスを一旦離して、唾をたっぷりと先端に塗って、その先端でクリトリスを愛撫してから、再び、挿入を試みる。今度はスムーズに中程まで入る。キコの表情も苦痛から、何かを待つような表情に変わっている。
「どう、痛くない?」
「……ううん、もっと来て」
来て、と言われると意地悪をしたくなる。僕は腰を動きを緩めて、ペニスを中途半端な位置に止めた。
「このぐらい?」
「……ううん、もっと奥」
奥までもっと下さい、と必死になって訴えるまで、ひたすら意地悪を続ける。おちんちんが欲しかったらもっとお願いしろ、永遠の愛を誓うぐらいに僕を愛して、何でもするってぐらいに尽くせ――。
「キコもエッチしたかった?」
「……うん」
「会ったばかりの男なのに、こんなに早くやらせちゃって良いの?」
「……いいよ、又さんだもん」
こんな問答がしつこく続く。いい加減、キコは半分怒ったように、
「……又さんのおちんちんを、キコのおまんこに入れてください……奥までいっぱいください、早く」
とお願いすることになる。
そう、僕ももう我慢の限界だった。
「はい、いいこだね、キコ、ご褒美」
そう言いながら奥までペニスを突き入れる。柔らかくまとわりつく肉の感触がたまらなく気持ち良くて、思わず声が出てしまう。キコの身体もぶるっと大きく震えて、全身の肌が汗ばんで艶が出てくる。
セックスをしている時の女性の身体って、どうしてこんなにも美しいのだろうと感動する。激しく腰を突き出しながら、その姿を逃さないと見つめ続ける。
「はあ、もうイキそう」
「うん、私もイク」
百メートルダッシュのように一気に激しく腰を動かして、二人同時にフィニッシュを迎えた。初めてのセックスで頂点に達するタイミングが合うなんて、滅多にないことだった。
二人、軽くキスを交わして、身体を離す。
「どうだった、半年ぶりのエッチは?」
「めちゃくちゃ、気持ち良かった」
「今までで一番?」
時に僕はそんなバカな質問をしてしまう。
「んー、どうだろ、でも、ベスト3には絶対入る」
ホントに? と嬉しくなる。その答えが本当であっても嘘であってもどっちでもいい。今、僕は最高に気持ち良かった、そう、今の一番であれば、それでいい。
しかし、僕とキコはいわゆる恋人の関係にはなれなかった。
だからと言って、仲の良い男女の友人でもセックスフレンドというわけでもなく、お互いに特別な関係として付き合っていた。
男と女の関係を求めるときはたっぷりとセックスを、友人での関係の時はくだらないことを良く語り合っていた。本を良く読んでいるキコの本棚を観るのは僕の楽しみで、キコは自分の好きなマイナーなバンドのことを熱心に話していた。
楽しみはもう一つあって、キコは渋谷にあるライブもするダイニングバーに働いていて、厨房にも入っていたことから料理はプロの腕だった。
僕とキコの共通のお気に入りは夏木マリだった。彼女の歌声は東京の狭い木造アパートの一室を、まったく別の空間に変えてしまう強い力があった。
CDを掛けながら、キコは台所で料理を作っていた。僕はとっておきのワインを飲みながらダイニングテーブルで本を読んでいた。
その日、僕はキコに夕食のメニューを紙に書かせた。
BGM:夏木マリの曲が流れる中で。
マダイのオリーブ焼きソテー、タイム風味、ローストポテトのローズマリー風味、トマトソースとマスカルポーネのスパゲティ、麺はディチョコね。
食後のティータイムはシナモンチャイ。
料理を食べながら、お互いのことを話す。
印象的な話として、キコはある男とフォーシーズンズホテルのスイートルームで一日中、朝から晩までセックスをした話をした。
「食べてる間もセックス、だって、セックスしかすることないんだもん」
と笑う。
また、キコはアパートの大家さんに誘われて、日本舞踊を習っていた。何でまた日本舞踊なんだよ、と僕はキコの行動に驚かされっぱなしだった。
ある日、キコは僕に、もうセックスはしなくないと言った。
思えば、半年間、誰ともセックスをしなかったのは、本当に未来を約束できる人としかしないと決めたからだ、と言っていた。
本当に好きな人、か……と呟く。
キコはエッチ無しでも逢えるよね、と言った。一緒にいて楽しいし、話も面白いし、これからも特別な関係でいたいと――。
「じゃあ、逢えないよ」
と僕は首を横に振った。
「じゃあ、しょうがないね」
とキコも言った。
キコのアパートからの帰り道、僕にとってセックスにどんな意味があったんだろうと考えた。どうしてエッチ無しでは会えないんだろうか、と。
答えは単純だった。
僕はキコのことが好きだったからだ。人としても、そう、女として。
会ったらセックスしたくなる。そんな自分の気持ちにウソをついて付き合うのは辛すぎる。いつか、求めて断られたら、お互いに傷付くことになる。
次に約束した週末のデートは予定表に書かれただけで、実際に会うことはなかった。それが僕たちの関係の終わりだった。
そして、数ヶ月後、突然、キコからメールが来る。
東京のアパートを引き払って、故郷の愛知に戻ると言っていた。
こんな事になるのなら、最後に会っておけば良かったな、と思った。一度だけ、チャンスはあったが、すれ違った時はもう戻ることはなかった。
このサイトでは、多くの“あのひと”を思い出して書いている。
書いて読み直してみると、時々、ふと怖くなる瞬間がある。
その人との想い出を大切に思っていても、その人にとっての僕は実は何でもない人間だったのかもしれない、と。
キコだって、彼女にとっての僕の存在は、東京にいた時に何度か寝ただけの男扱いなのかもしれない。
――僕は自分の脳を上手にコントロールして、都合の良い記憶だけを継ぎ接ぎして、勝手に良い想い出として美化して酔っているだけではないかと。
いや、例えそうであってもいい。
キコはそうではなかったのかもしれないけれど、
僕はキコのことが大好きだった。
そう強く言い切ればいい。
他人は信じることができなくても、自分の心は強く信じることができるから。
(了) |
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