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僕と君と明日のつづき
四畳半ダンディズム
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細川又三良
(ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。

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060.『お前ってホントにバカだよな』
Date: 2006.10.26
  時々、彼女の言動にほとほと呆れて、そんな言葉が口から出る。
  くだらないことを言ったり、しょうもないことしたり、とんでもない勘違いをしていたり、呆れてこの言葉しか出てこなくなる。
  しかし、この言葉は決して彼女を軽蔑して言っているわけではないのだ。
  むしろ、愛の言葉に近い。
「お前ってホントにバカだよな」
  彼女の一番近くにいて、彼女の心を一番理解して、彼女がバカでも間抜けでもアホでも愛してると強く言える僕だから言えるセリフ。発言のコツは「ホントに」のホンの部分にアクセントとタメが必要なこと。
  彼女もそれをわかっていて、そのセリフを言うと、きゃーんと甘えて抱きついてくる。
 
  それを考えると、恋愛って、相手の良いところを愛するのではなく、いかに相手のダメなところまで好きになるかってことではないだろうかと思ってしまう。
 
  恋の始まりは自分を美しく見せることから始める。
  男ならやりたい下心を隠しつつ、頼もしい自分、優しいオレ、夢を追っている男を演じてそれをアピールする。
  女なら共感の相づちを始めとして、なるべく相手に不快感を与えないようにして理解のある私を演じつつ、相手がどんな人なのかを観察している。
  初めてのデート、初めてのキス、初めてのセックスを経て、徐々に相手の化けの皮が剥がれてきて、必死に創り上げた幻想が崩れ去ると共に、相手の本性が見えてくる。
 
  恋に恋する段階ももちろん楽しいけれど、本当に楽しいのは相手の本当の姿が見えてくる頃だと僕は思う。逆に、相手の本性を見て、違うなと思えば、早々に別れてしまった方が良いに違いない。
 
  これはSMやボケとツッコミのような一方的な関係ではなく双方向の関係なのだ。
  実際に僕は下品でえげつない下ネタを連発したり、ダジャレのようなオヤジギャグを飛ばしたり、天然で頭のネジが一本はずれたようなこともしてしまう。
  そんな時、僕も言って欲しいのだ。
 
  普段、きっちりとスーツを着こなして会社でも仕事をバリバリとこなしているキャリアウーマンの彼女に冷たい目で、
「まったく、又さんってホントにバカだよね」
と見下されるように言われたら、布団にごろんごろんと寝転がるほど嬉しいし、
  いつも僕の方が、お前ってバカだなぁ、と言う十歳も歳の離れたドジッ子の彼女に、
「いい歳して、又さんって本当にアホなんだからぁ」
と舌っ足らずの声で言われるのも、ほっぺたをスリスリしたいほど嬉しかったりする。
 
  時々、テレビや雑誌などマスコミで、夫婦の関係において、お互いの褒め合うと関係が良くなるとコメンテーターが話しているのを聞く。
  外国人のように、人前でも、相手のことを褒めましょう、とか。
  それって綺麗事ばかりで気持ち悪い建前論のような気がして、愛の本質を捉えていないような気がする。しかも、会話はそこで止まってしまうからつまらないだけだ。
  何のことはない、
「もう、この人って本当にこんなんで、しょうがない人なの」
などと、くどくどと愚痴を述べる人に、
「じゃあ、何で一緒にいるの?」
と、シンプルでストレートな質問を返してみればわかる。
  彼女は少し照れ隠しに笑って、
「さあ? どうしてだろうね」
なんて首を傾げてみせる。
  百の愚痴や悪口もそれらをひっくり返す気持ちを持っているからこそ言えること――そう、そんな人でもやっぱり大好きだから。
 
「お前ってホントにバカだよな」
  もしかして、「愛してる」よりも真実かもよ。

 (了)
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