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author
細川又三良 (ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。
art direction & design
Instant Design Works
photograph
matasaburo EXHIBITION |
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| 057.『パッケージング・フェチ』 |
| Date: 2006.10.18 |
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包装紙、シュリンクラップ、段ボール、ブリスターパック、発砲スチロール、エアクッション……すべてはパッケージのためにあるもの。
パッケージ――ああ、なんと甘美な響きなのだろう。
先日、ある家電を購入した。
大きく店の名前が入った紙袋から段ボールを取り出して、まじまじと見つめる。パッケージングのフェチは段ボールのデザインにもうるさい。カラーリングは単色で三色ぐらいしか使えないが、その制約がデザイナーの腕の見せ所だ。シンプルで美しい段ボールは捨てずにそのまま取っておきたいとも思ってしまう。
カッターナイフで丁寧にテープを切って、ゆっくりと段ボールを開けるとそこには発砲スチロールとビニールに包まれた商品が姿を現すと同時に、プンとケミカルの匂いが漂う。
発砲スチロールを取り、仮止めしたテープを剥がして商品をこの手にするのは人生でも至極の楽しみだ。
リサイクルが声高々に叫ばれている昨今、過剰包装は悪だと言う考えは分かるけれども、やはり、自分が高いお金を払って買ったものは、ちゃんとパッケージングされていないとイヤだと思ってしまう。
秋葉原のジャンクショップで使えるか使えないかわからない部品を買い漁るのが好きなぐらいだから、最終的には商品が問題なく使用できれば文句はないのだが、パッケージはそれとは別の美学だと僕は考えている。
パッケージングに関しては、僕はもはや病的だ。
商品を一通り舐めるように見てから、また箱の中に戻したりするのは当たり前のこと、箱ごと商品を抱き締めて物の重さを感じて涙したり、商品や取扱説明書に鼻を近づけてシンナー中毒のようにケミカルな匂いに酔いしれたり、創意工夫のあるパッケージには惚れ惚れしてうっとりと眺めたり、商品を使う前に僕はたっぷりと楽しんでいるのである。
人によっては中身が必要なんだから箱などのパッケージなんて関係ないと、包装紙をビリビリと破って、段ボールもさっさとゴミ箱に捨ててしまう人がいる。それはそれで潔いとは思うけど、僕はやっぱり好きではない。
店頭やインターネット、パンフレットなどで数ある製品の中から悩んで選び抜いた一品。もしくは、ふとした出会いで一目惚れして買った一品。
良い製品は良いパッケージがある。それは一つの真実だ。
破損しないための仕組み、分かり易く工夫された配置、そして、購入者の開ける楽しみまで神経が行き届いていて、良い物を作る人たちはそこまで細やかに考えているのがわかる。商品が子ならば、親であるメーカーの愛を感じられる。また、それがお金を出した側として嬉しいのである。
だから、僕はパッケージにも異常にこだわるのだ。
そんなことを考えていると、ふと、女性もそうではないか、と思ってしまった。
彼女たちもまた自分をパッケージングしているのでは無いだろうか。
人間は中身が一番大切とは良く聞くが、されど最初に見えるのは外見。女の子は自分をより良く見せるために服やアクセサリー、髪を弄って自分をより良く見せるのだ。
彼女たちは男たちに美しくパッケージングされた包装を解く楽しみも与えてくれる。キスをして服を脱がせる時、僕は楽しみで仕方がない。
一つ一つブラウスのボタンを外し隙間から覗くのはどんなブラなのか、乱暴に捲り上げたスカートの中身はどんな色で僕を誘うのか、そして、すべてを剥ぎ取った後、彼女はどんな表情を見せるのだろうか。
セックスの後、再び欲情するのは、彼女がきちんとメイクをして服を着替えた時だったりする。これ以上無いほど彼女の肉体をむさぼって、さっきまで彼女の裸を見てもなんとも思わなかったのに、スリムなタイトスカートを見た瞬間に、脱がしたくなる欲求に駆られた。きちっとすればするほど、欲望の炎は燃えさかる。
パッケージング・フェティシズム。
狂おしい気持ち、執着、性的倒錯、それはきっと深い愛。
やめようと思って、やめられるものではない。
ある朝、見た夢は棺桶に眠る美しい彼女に花を添える夢だった――お気に入りだった濃いブルーのドレスを着て横たわる彼女の周りに色とりどりの花を添えていく。それは完璧なほどのパッケージングで、圧倒的な美を誇っていた。
周りの人間が悲しみに暮れる中、僕はなぜか子どもになっていて、何がそんなに嬉しいのか、満面に笑みを浮かべてはしゃいでいた。
大人は僕がまだ幼くて、悲しみを理解できないと思っていたが、僕だけは知っていた。
傷一つ付けずに彼女を殺したのは自分だと言うことを。
(了) |
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