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僕と君と明日のつづき
四畳半ダンディズム
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細川又三良
(ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。

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056.『やりまん女の奇跡 episode I』
Date: 2003.01.28
  やりまん、させ子、公衆便所――と、単語は違っても、意味は同じ。
  要するに男に誘われたら誰でも簡単に寝ちゃう女の子のこと。
  男性にとっては口説く必要もなく苦労せずにエッチが出来るわけだから、ありがたい女神のような存在でありつつも、絶対に彼女にしたくないという軽蔑の対象でもある。
  カヨコはそんな女の子だった。
  僕も彼女と出会う前から、セックスのことばかりを考えていた。
  別にカヨコでなくても誰でも良かった、きっと。
  顔なんて、ついていれば良い。小さかろうか大きかろうかオッパイは二つあれば充分。性格なんかよりも身体の相性の方が重要。
  そうさ、僕の性欲を満たしてくれる柔らかく濡れた穴があればいい。
  それ以外、彼女に求めるものは何もなかった。
  カヨコと出会ったのは西麻布にあるクラブだった。
  以前、一緒に仕事をしたフォトグラファーに誘われて、遊びに行った時から始まる。
 
「ここ入れ食いですから、お互い適当にフェードアウトしましょうねー」
  大音量のテクノが鳴り響く中、フォトグラファーの彼は僕の耳元でそう大声で叫んだ。彼が僕を誘ったのは、打ち上げがてら食事をした時に、プライベートなことをポロッと漏らしたことがキッカケだった。
「最近、彼女と別れたんですよ」
  それを聞くと彼はニヤッと嬉しそうに、
「じゃあ、今度、一緒に遊びしょうよ」
と笑った。
  そういうわけで僕はここにいる。
  フォトグラファーの彼はじっとフロアーを見渡して、高性能のカメラのようにフォーカスの焦点を合わせて、ターゲットを見定めると即座にスツールから立ち上がって、静から動にアクションを起こした。
  彼が声を掛けたのはトイレから出てきた二人連れの女の子だった。
 
「ねえねえ、楽しんでるー?」
  明るく陽気に馴れ馴れしく会話を続ける彼の隣で、僕はただ隣でヘラヘラと笑顔を浮かべて相づちを打っていれば良かった。
「みんなで一緒に遊ぼうよ」
  彼はそう言いつつも十分もしないうちに女の子の肩を抱いて、どこかに消えてしまっていた。
  僕の相手は残り物の方だった。
  残り物とは彼女に対して失礼だったが、実際に僕には選択肢が無かった。声を掛けたのは彼なのだから優先権は彼にある。僕は運命を受け入れるかのように、残ったもう一人の彼女に微笑んだ。
  暗闇の中でも彼女が美人でも可愛い子でもないことはわかった。目は一重でどこか眠たそうで鼻は少し上を向いている。しかし、どこか親しみのあるルックスで、身体もぽっちゃりとしていてセックスの相手としては悪くはなかった。
  プラスティックのグラスに注がれた水っぽくて味気ないカクテルを手渡して、有ること無いこと、どうでも良いことを適当に話す。当然、彼女の話なんて真剣には聞いて無くて
、適当に褒めちぎりながら、頭の中はさっさと外に連れ出すことばかりを考えていた。
  グラスに残ったカクテルをくっと飲み干して、
「ね、これからどうする?」
とさり気なく彼女に訊く。
  んー、どうしよっかなー、と言いたげな彼女の返事を待たずして、
「ここ出て、外に行かない?」
と言う。
  彼女は「うん」とうなずいて高いスツールから降りようとした。足が床に着いた途端にふらっとよろめいて、僕はすかさず彼女の身体を支えた。ふと見つめ合って、ついでにディープなキスをぶちかます。
  いきなりのキスでももちろん彼女は嫌がることはない。
  強く何かを求めるようなねっとりとした舌の動き、柔らかく濡れた唇の感触はペニスへの愛撫を想像させて、一瞬にして僕のペニスはいきり立った。
  やったね、これで楽勝♪
と心の中で呟いた。
 
  しかし、事態はそんなに簡単には進まなかった。
  運命は僕の意図せぬ方向へと急カーブを描いていく。
  そう、やりまん女の奇跡はすでに始まっていた。

 (※『episode II』につづく)
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