|
|
|
|
|
|
|
connection |
|
 |
お気に入りに入れる |
|
|
|
|  |
メールを書いてみる |
|
|
|
|  |
メッセで話してみる |
|
|
|
|
author
細川又三良 (ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。
art direction & design
Instant Design Works
photograph
matasaburo EXHIBITION |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
caution
※当ウェブサイトはリンクフリーです。リンク等に関して 許可申請やリンク報告などの必要はありません。
※収録された小説作品はすべてオリジナルです。エッセイは一部事実を元に構成されたフィクションです。
※文章や写真の無断転載や無許可使用など、及び画像データへの直接リンクは一切禁じます。
subscriber
総購読数
(2002.05.20〜現在)
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
 |
| 039.『十年後』 |
| Date: 2002.04.12 |
 |
「私ね、祐樹と寝たの」
東銀座から恵比寿に向かうほんの短い間に雨が降った。
「ごめんね、言わないつもりだった」
地下鉄の出入口から階段の向こう、空を見上げる。
「ずっと、あなたにウソついてた」
いつか見た曇り空に似てるな、と想った瞬間――。
「でもね、でも……」
ふと、君の言葉が思い出された。
「もう限界」
あの夏、僕は君を驚かせようとアパートの部屋の前で待ち伏せを企てた。
「もうダメなの」
突然の雨、そして、アパートで見たもの。
「もう、ウソ付きたくないの」
路肩に泊まっていたターボが付いた見慣れた黒のスターレットと、
「私、祐樹が好き」
バイトをしているはずの君の部屋の明かり。
「祐樹が好きなの……」
ドアをノックしなかったのは君のことを信じたかったから、
「私、ひどい女だよね」
と言うよりも、君のホントの気持ちに気付いていたから。
「あなたの隣にいることが、とても辛かった」
僕も、君とヤツと一緒にいることが辛かったよ。
「知らなかったでしょ?」
いや、君は正直過ぎたよ。
「ずっと、好きだったの」
良いヤツだったけど、女もお金もだらしなかったな。
「祐樹が亜由美と別れた日」
たしか三万も貸して、その上、君まで返ってこなかった。
「あの日、私、バイトするって言ったよね」
お人好しにもほどがある。
「憶えてる?」
ああ、うん。
「あの日ね」
ちょうど、こういう天気、曇り空、突然の雨だった。
「祐樹をウチに呼んだの」
驚かせようとしたら、
「そこでね」
逆に驚いた。
「祐樹と寝たの」
あーあ。
「私を許して」
許さないって言っても、好きな気持ちは止められないでしょ。
「……彼の代わりってわけじゃなかったの」
僕に抱かれてる時も、ヤツのこと考えていたんだろうね。
「本当にごめんなさい」
大丈夫、あれから、もう十年経ってる……でも、やっぱ嫌だね、今でもムカつくよ。
「あなたは私にとって大切な人、だから、失いたくなかった」
でも、僕は優しすぎた。
「大切な友達なの」
あの頃から、この台詞にはウンザリしてたな。
「これからも友達でいてくれる?」
あれから十年後――。
「祐樹は悪くないの」
ヤツも。
「全部、私が悪いの」
君も。
「祐樹、すごく気にしてたから、あなたのこと」
今、何をしているのかな?
「友達は裏切りたくないって言ってた」
僕は上京してから十年、この街で毎日忙しく暮らしてる。
「私も、ウソは付きたくなかった」
少し痛くて、でも、懐かしい傷跡として、
「ごめんね」
あの日に似た空模様に、君たちのことを思い出しながら。
(了) |
|
 |
|
|
|