RGB
このサイトについて
僕と君と明日のつづき
四畳半ダンディズム
connection
favorite お気に入りに入れる
e-mail メールを書いてみる
Windows Live Messenger メッセで話してみる
author
細川又三良
(ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。

art direction & design
Instant Design Works

photograph
matasaburo EXHIBITION
caution
※当ウェブサイトはリンクフリーです。リンク等に関して 許可申請やリンク報告などの必要はありません。

※収録された小説作品はすべてオリジナルです。エッセイは一部事実を元に構成されたフィクションです。

※文章や写真の無断転載無許可使用など、及び画像データへの直接リンクは一切禁じます。

subscriber
総購読数
(2002.05.20〜現在)

 
035.『何でも好き好きランキング』
Date: 2002.04.23
 夏の終わり、すっかりと涼しくなった夜更け、窓の外から聞こえる秋の虫の音色をバックグラウンドに、恋人たちは一日の終わりに愛の告白をする。
「アキ、愛してるよ……」
  濃厚で甘いロマンティークな愛のひととき。
「又さん、私も……大好き」
  メールも良いけど、やはり、声を聞きたい時もある。
  話したいことなんて特にない、ただ、大好きな人の声を聞いて、愛してるって言われて、幸せに包まれて眠りに就きたい。
 
  しかし、そんな甘いムードも素っ気ない又三良の一言で破られることになる。
 
「うん、アキ、大好き」
「ん、うれしい」
「少なくてもタコ焼きより愛してるよ……」
「え”!? ちょ、今、何つった?」
「はい? いや、タコ焼きよりも愛してるって」
「ぬわんで、タコ焼き?」
「いや、今、2位がタコ焼きだからさ……」
「ど、どーして、私とタコ焼きを較べるの?」
「タコ焼き、最近食べてないから恋しいなって思って」
「そーじゃなくて、又さんにとって私は何なの?」
「んな、倦怠期の恋人みたいなことを言うなよ」
「いいから答えてよ、何よ、私の存在って何なのよ」
「恋人でしょ?」
「じゃあ、何で順番をつけるの!」
「えー、誰だって、今、この瞬間の好き好きランキングぐらいあるでしょう?」
「ない、ないよ、そんなもん」
「あるよ、あるある」
「私ないもん」
「そぉ? でもさ、君は今、この時点の又三良の好き好きランキング・トップ10の輝ける1位なんだよ。どうしてうれしくないの?」
「2位は?」
「だから、タコ焼き」
「3位は?」
「んー、ティムバートンのDVDかな」
「4位は?」
「今、更新途中のエッセイ」
「5位は?」
「えっと、先週、人から貰ったSDRAMの256MBのメモリかな……」
「その中で1位が私……」
「うん、うれしいでしょ? やいっ、このっこのっ!」
「うー、いや、全然、うれしくない、悪いけど……いや、悪くないけど」
「どうして? ダントツの1位だよ。世界一、つまりはトップ・オブ・ザ・ワールドなんだよ」
「だって、2位がタコ焼きなんだもん……」
「何を言ってるんだ、僕は今日、夕飯も食べずに働いていて、駅前に美味しいタコ焼きの屋台が出てるから、今からそれを買いに行こうと思ってるんだ。それよりもアキのことが好きだからこそ、時間を惜しんで電話してるのに」
「うーん」
「それでも、うれしくない?」
「……微妙っていうか……」
「んだよ、だったら、どういうランキングだったらいいの?」
「え?」
「だから、『歴代彼女ベスト10』とかで言えばいいわけ?」
「イヤよ、較べないでよ」
「僕だってイヤだよ。そんなの順位なんて付けられるわけ無いし、大体、失礼だよ、まったく、謝れよ」
「う、うん……ごめん」
「でしょ? だったら、良いじゃない。とにかく、又三良好き好きランキングの1位、ナンバーワンなんだからさ」
「うん、良かった……かな、うー、でも、やっぱ、かなり微妙」
「なんだよー、相変わらず、ワガママ姫だなぁ」
「こういうの、ワガママっていうのかな……?」
「じゃあ、どーすれば良いんだよ」
「ねえ、もしかして、私、タコ焼きに負けることってあるの?」
「う〜ん、わからないね。あるかもしれん、例えば、タコ焼きをはふはふって食べてる時とか、君からの電話は取れないかもしれない、その時は……タコ焼きが一番になるのかもしれん……」
「いやーいやーいやー!」
「でも、タコ焼き食べるのにはそんなに時間掛からないし!」
「そういう問題じゃな〜い」
「じゃあ、どういう問題よ?」
「ううううう、とにかくイヤなの。そんなランキング」
「じゃあ、アキを一番にするにはどうしたら良いんだよ?」
「ええー、別に一番でなくてもいいよー、較べないでよ」
「それはできん」
「何で、何でよ、又さんおかしいよ」
「ぶうー、だって好き好きランキングは常に存在するんだもん」
「だから、そんなランキングなんて止めてって言ってるの」
「でも、アキだって、ラーメンは一風堂の赤丸が一番美味しいとか言ってたし、今、あの曲が一番イイっとか言うじゃない。友達でも一番の親友がミナで最悪なのがシホだって……」
「ううっ」
「確か、僕のことも一番好きとか言って抱きついてきたよね」
「あれは、えっと、んっと……」
「言ってたよね?」
「う、うん」
「何と較べたのさ?」
「あれは……あれはたぶん言葉のあやだよ」
「ふーん、でもさ、一番があるなら、二番もあるんでしょ? もしかして他にいるの、男とか?」
「いるわけないでしょ、も〜いい加減にしてよー、屁理屈言って困らせないで」
「屁理屈じゃない! ぷんぷん! アキだって同じじゃん」
「同じじゃない」
「同じ」
「違うよ」
「本当にイヤなの?」
「うん、ホントにホントに嫌なの!」
「そうかぁ……」
「うん、止めてください」
「わかったよ、もう止めるよ」
「うん……ごめんね」
「ううん、いいんだ。そうだね、アキのことを無意味な数字でランキングしたのがいけなかったんだね」
「う、うん」
「了解、これからは番付にするよ」
「えっ、はっ、なに?」
「だから、番付だよ。今、この瞬間、又三良番付でアキは東の横綱で、あ、イメージは昭和の大横綱、千代の富士にしてやるよ。タコ焼きはカド番の大関だ。これでいいでしょ? うりゃ、どすこーい!」
「あの……又さん?」
「いいよ、別にありがとうとか言わなくても、こっちの方がしっくり来るし」
「いや、そうじゃなくて……っ、もういい」
「えっ?」
「……さよなら」
「あんっ?」
 
  突然、ガチャッと切れる電話。
  あれれ、どうして電話、切れちゃったのかな? と言わんばかりに又三良は首を傾げて携帯電話を見つめている。
  ふう、女の子のココロって複雑だなぁ……とでも思っているのだろうか、まったく、いつまで経っても、おめでたい人間である。

 (了)
<メニューに戻る>
(C)Copyright matasaburo
CMYK