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僕と君と明日のつづき
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細川又三良
(ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。

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031.『「いつか、どこかで、逢えたらいいね」』
Date: 2006.08.27
 熱帯夜が続く八月の夜、Windows Live Messenger(旧 MSN Messenger)をオンラインにしたままフォルダの整理をしていると、ある女性が話し掛けてきた。
「はじめまして、では、無いのですけど……」
と言う彼女は、ずっと以前に話したことのある人だった。
  いくつかメールを交換したと言うことで、過去のメールを検索し、彼女がどんな人だったのかを思い出す。
  強い印象は残っていないが、当時のメッセの記録も残っていて、お久しぶりですね、と旧友に会う感じで、最近のismの印象やお互いの出来事について語る。
  僕の感情にふと影が差したのは、彼女のこんな一言が原因だった。
「あの頃、神戸から、又さんに会おうと東京に行こうと思ったんですよ」
「へえー、そうなんですか」
と特に何も思うことなく返事を返す。
  そう言われるのは慣れているからだ。
 
  又三良に会ってみたいという人はそれなりにいて、そのリクエストに対して過去の反省も踏まえて、男性の場合はセンスや知識があり、お互いに有益な会話ができる人としか会わないし、女性の場合は即エッチが前提になりますよ、と返事をすることにしている。
  多くの女性はその条件で躊躇して、そんなことを言い出さなくなるから、わざわざお断りする面倒もなく、なおかつ、これ一つで本気で会いたい人と社交辞令の人と分別できるから、フェアで公正で便利な基準だと思っている。
 
  そんな彼女たちの特徴は「あなたに会いたい」と告げておいて、しかし、実際問題になると、今度はあらゆる言い訳ばかりを並べて「残念ながら……」と語尾を濁すパターンに終始している。
  私、すごく慎重なのかもしれません、と言う彼女たちは、自分で散々、石橋を叩いて叩いて壊しておいて「あの時、こうしていれば、今頃は……」なんて後悔しているのだから面白い。
  さらに「いつか、どこかで、逢えたらいいね」などと、曖昧な言葉で先送りにして終わろうとする。
 
  ある意味、女心はそういうものだと僕も理解している。
  男性とは違い、女性の心は湖に浮かぶ小舟のように常に揺れているものなのだ。
  又三良に会いたい気持ちは事実だろう、しかし、実際に身体を重ねるまでには覚悟がない、だったら言わなきゃいいのに、自分を好意的に見せたいために会いたい気持ちを伝える、されど、実際に会ったとして好かれるかどうか不安であり、だけど、ここでハッキリと断って嫌われたくはない――だから、結局、何の決断できないまま、曖昧な言葉でお茶を濁してそそくさと退散することになる。
  そう、彼女たちの気持ちは風見鶏のようにくるくると同じ場所で回っているだけ。
  前にも後ろにも進むことはない。
 
  大丈夫。
  僕はそんな女性を嫌いになることはない。
  アイデアル・スタンプ・モンタージュの文章を読んでくれれば、それで満足だし、会話をしたいのならメールやメッセですれば良いわけだし、直接会う必要など全くないからだ。つまり、恋愛対象としては好きも嫌いも無いってことになる。
 
  そう、会う会わないの選択権は僕にもあるわけで、きっと僕はそんな女性たちとは絶対に逢うことはないだろう――。
 
  このことを突き詰めて考えるようになったのは、ある女性の存在が大きい。
  彼女には人生で一番大切なこと――人と人との出会いは本当に一期一会だということを教えてもらった。
  人生においてその時を逃してしまえば、もう二度と機会が訪れないことがあることを、つい一週間前まで彼女が横になっていた病室のベッドの光景と共に、強い後悔として僕の胸に残っている。
 
  あの時、勇気を出せば、自信があれば、金と時間と余裕があれば――なんて自分を守るだけの言い訳ばかり並べても、後悔は募るばかりで消えることはない。
  人生を後悔で埋め尽くしたくなければ、何かをする前に言い訳を用意せず、勇気を出して決断し、あとは恐れず前に進むことだろう。
 
  そして、いつの頃からだろうか、
「いつか、どこかで、逢えたらいいね」
と平気な顔をして言う人に、
「そうかな? 僕はあなたとは一生逢えない気がするよ」
とにっこりと笑って返すようになった。

 (了)
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