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author
細川又三良 (ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。
art direction & design
Instant Design Works
photograph
matasaburo EXHIBITION |
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(2002.05.20〜現在)
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| 017.『ねえ、私のどこが好きなの。100コ言える?』 |
| Date: 2002.08.25 |
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「ね、私のどこが好きなの?」
もし、君が男性だったら、こんな彼女の質問にどう答えるのだろう?
「うん、優しいし、思いやりがあるし、僕のことを好きでいてくれるし……」
そんなありきたりの言葉で答えているのではないか、もしくは、
「嫌いには理由があるが、好きには理由が無いんだよ」
とはぐらかして逃げてはいないだろうか。
僕がその彼女だったら、
「な〜んだ、つまんない人」
と心の中で呟いてしまうかもしれない。
君にとって彼女はどんな存在なのだろう?
お互いにモテモテのプレイボーイ&プレイガールでなければ、その相手は、この世に一人しかいない“特別”な存在のはず。
その人のことを「優しい」とか「思いやりがある」なんて、誰にでも通用するような言葉で表現するなんて、やはり愛情を疑ってしまう。
さらに「好きには理由がない」だと?
ふざけんな、こら。
世の中には理由も無いのに嫌いになったり好きになったりしないんだよ。もし、本当に理由が無いのなら、彼女のことをそんなに深く考えてないってことの証明だ。
一度でも深く考えたのならば、好きになった理由の一つや二つぐらい軽く言えるはずだ。
「ね、私のどこが好きなの?」
と聞かれたら、春のそよ風に吹かれているような顔で、
「ん、そうね、たくさんありすぎて、すべてを言うには時間が足りないのさ」
と言えばいい。
それで、
「ねぇねぇ、たくさんっていくつぐらい?」
なんて、彼女が食い下がってきたら、
「そうね、パッと思いついただけでも100は余裕かな。でも、語るには長く掛かる割に退屈だから、一緒に楽しくテレビでも見ようよ」
と、さり気なくかわそう。
「いいから、長くて退屈でも聞きたい! 100コ全部聞きたい!」
しつこく彼女が食らいついてきたら……テレビの電源を消して、
「分かった」
と彼女の顔を真正面からまじまじと見つめよう。
そんなに聞きたいのなら聞かせてやるよ、と腹をくくるのだ。
誰だって、好きな人に好きと言われたいはずだ。100コの言葉で愛情に確信が持てるのならば、そのぐらい平気で言おうじゃないか、自分が思う彼女に魅力をすべて伝えよう。
肝心なのは、あくまでスマートに、必死で考えていると悟られないことと口元にはスマイルを忘れないこと。
だからと言って、
「ええっと……じゃあ、まず一つ目は優しくて、二つ目が思いやりがあって〜」
と、これでは何の意味はない。
大体、この調子では100も続かないだろう。
ずっと前に所属していた会社で、コンテンツ企画100本出しという血も涙もない仕事を嫌な先輩にやらされた僕は少しだけアイディア出しのコツを知っている。
なあに、100と一塊に捉えるから多いと感じるのだ。十を十回繰り返すと思えば大したことがない。
例えば、彼女の脚が好きなんだ、と閃く。そうしたら、彼女の脚で思いつくことを五〜十ぐらい思いつけばいいのだ。「君の右足の潰れた小指のツメが好き」とか「マラドーナ思わせる太股が好き」など……いや、これらはNGなんだけど。
脚などのネタが尽きたら、今度はデートの場面でも思い出せばいい。重要なのは具体的な動作を思い出すことだ。
「イスに座る時、いつも“んしょ”と無意識に言っているのか可愛い」とか「パンスト履いてる時に見せる、必死な形相とガニ股の後ろ姿が妙にチャーミング」とか……いや、これもNGっぽい。
と、今までの例はNGばかりだが、別に無理矢理褒めようとしなくてもいい。もちろん、ネガティブな事ばかり言うのは本末転倒だが、少しの欠点ぐらいなら言っても別に構わない。
完璧な人間なんていないのだ。むしろ、数えてみれば、人間は長所よりも短所の方が多いかもしれない。誰だって自分の身体や性格についてなにがしらコンプレックスを抱いている。僕はそれもあえて好きな場所と相手に伝える。欠点も丸ごとチャームポイントにしてしまえばいいのだ。
そう、野球のピッチングのように緩急を織り交ぜて、ネガティブな事は冗談っぽくふざけて言って、ポジティブな事を真剣に言えばいいのだ。
最後に「僕は君の嫌いな所をひっくるめて、君のことが好きなんだ」と本心から言えれば何ら問題はないだろう。
蛇足だが、女性はこの手の会話を簡単に彼氏としない方がいい、とアドバイスしておく。僕の考え方は特殊で、未だに多くの男たちは“言葉よりも態度で示すのさ”というダンディズムを持っているはず。いきなり100コ言ってと言われても驚かれてしまうだろ。 それに単純な質問の割に頭を使うので、答え方によっては彼氏のオツムの程度も分かってしまったりするから危険だ。
「ね、私の好きな所、100コ全部言ってくれる?」
と聞いて、逆に、
「ああ、じゃあ、言ったら、お前もオレの好きな所を100コ言えよ」
なんて、サラリと返されたりするから、自分にも相応の覚悟がない場合、軽はずみな気持ちで質問するべきではないだろう。
……そう、僕もその質問返しで防いでいたのに、過去に一人だけ、それをひょうひょうと突破した女の子がいた。
「とりあえず、100コ全部言ったよ」
「お疲れー^^」
「どうだった?」
「うれしい、いっぱい私の事見てくれてるんだなーって思った」
彼女は満足そうに笑っている。
「そう?」
「うん、とっても」
「……で、君は僕のどこが好きなの? 100コ言ってくれるんでしょ?」
一瞬、止まる彼女、
「えっ……」
「え、じゃなくて、ほら、君も100コ言って……」
「あはっ、私、又さんのこと全部大好き」と、おもむろに彼女は顔を寄せてきて、そのまま口を塞ぐかのようなキスで僕を押し倒した。
僕よりも随分年下のくせに、彼女の方が一枚上手だった。まあ、そんな所も好きに違いないんだけど……。
(了) |
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