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僕と君と明日のつづき
四畳半ダンディズム
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細川又三良
(ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。

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013.『物事の終わりと始まりと』
Date: 2006.04.20
 毎年、四月一日になると『アイデアル・スタンプ・モンタージュ』を閉鎖しますとアナウンスをする。
  このエイプリルフールの閉鎖ネタは読者の方にすこぶる評判が悪くて、再開した後でも批判されることが多い。
  当然のことだろう。毎日、サイトを楽しみに訪れてくれる人からすれば、びっくり悲しい気持ちにさせるだけで、あまり意味のない行為だ。しかも、2006年度はサーバーの移転に伴いサイトデザインも一新するため、本格的な閉鎖を匂わせて多くの方を心配させてしまった。
  どうせ再開するのに、あんまり騒がないで、と思いつつ、それを知っているのは僕本人だけで、まったく人騒がせな人間だと思われても仕方ないことだろう。
  しかし、僕は何度も繰り返してしまう。
  そんな僕を端から見て、退屈を紛らわすために「オオカミが来た!」と叫び、村人たちの慌てふためく態度を見て笑う羊飼いの少年の姿に重ねる人もいるのだろう。
  だが、そこには僕なりの考え方もあるのだ。
 
  僕は良く物事を終わりから考える癖がある。
  ふと、これからどうしようかと立ち止まる時、物事の終わりをシミュレーションして、終わった先にある始まりを考えるのだ。
  例えば、このサイトの場合、毎日の更新が面倒になったり、心ない人からの誹謗中傷に疲れたり、書くことが無くなったかな、と思う時に、閉鎖した後の日々を考えるのだ。
  本当に大切なものは失った時にわかる、という言葉があるように、もし、このサイトを閉鎖したら、僕は何を失うのだろうかと、自分の心に試してみるのだ。それは頭の中でウンウンと考えるのではなく、実際に閉鎖文を書いてサイトにアップして、僕も読者の一人として目の当たりにすると実感として心に残すことが出来る。
  しかし、それは質の悪い冗談過ぎて、いきなり普段の日常では行えない。その時、ちょうど春を迎えエイプリルフールが近づいていた。タイミング良くそれに乗っかる形で閉鎖ネタをやったのがそもそもの始まりだった。
 
  一度、失うことを想定することで、その存在の大きさに気付いて、大切に扱うようになる――僕はこの心の働きについて悪いことではないと思っているが、しかし、この考えは絶対に女の子には話してはならない。
 
  ずっと前、エイプリルフールを迎えた時に、当時付き合っていた彼女に上に書いたことをくどくどと説明したことがあった。彼女はずっと前からの閉鎖ネタ反対論者の急先鋒だった。
「又さんが考えてることわからないでも無いけど、でも、やっぱり、エイプリルフールって楽しいとか笑えるウソをつかなきゃ……悲しいウソはダメだよ」
「んー、でも、閉鎖だって言ってガッカリして、次の日にウソだって知ったら、ハッピーになれない?」
「……なれないよ、バカみたい」
  プイと明後日の方向を向いた彼女に僕はムキになって言葉を続けた。思えば、この時点で話を止めていれば良かったのだ。
「恋愛関係でも一緒だよ、僕は付き合ってる最中にいつも別れることも考えてる」
「へ、何それ」
「実際に別れちゃうとさ、その直後は清々するかも知れないけど、あとで絶対に後悔するでしょ。ああ、どうしてもっと大切にしてあげなかったんだろう、と、もっともっと優しくしてあげられなかったんだろうって、だから、後悔する前に……」
「だからって、別れることばっかり考えてるの?」
「いや、時々だよ。いつもじゃない」
「なんか、それって、私と別れたいためにわざと言ってるんじゃないかと思っちゃうよ」
  はぁ!? なんでよ、どうして言葉が通じないんだよ、と、ため息ついでに口の中で呟く。どう説明すれば伝わるのだろうか、と考えていると、黙りこくってうつむいた彼女の頬から一筋の涙が伝わっていくのが見えた。
「違うよ、全然、逆だよ。別れたくないから、考えるんだよ」
  しかし、僕の声はすでに意味を伝える力を失って、虚しく宙に浮かぶだけだった。彼女が泣き止むのをじっと待ちながら、この考えは誰にも理解されないのかな、と考えていた。
  茫然とイスに座る僕に、彼女は嗚咽を堪えながら、
「……別れってね、言葉にすると本当になっちゃうかも知れないんだよ、だから、例え話でも、そういう話をしちゃダメなの」
と僕に向かって言った。
  僕は小刻みにうなずきながら、
「そうだよね、ごめんね」
と謝った。
 
  もし、その時の彼女が2006年の四月一日に懲りもせず、また、閉鎖ネタを繰り返していると知ったら、一体どんな顔をするのだろう。
「相変わらず、捻くれてるなぁ」
なんて思って笑ってくれるだろうか、いや、たぶん、呆れた顔でウィンドウを閉じるに違いない。
 
  正直にここに書き記せば、僕は『アイデアル・スタンプ・モンタージュ』を立ち上げる際に、ある目的を掲げていて、それを達成されるまでは閉鎖せずに続けていこうと考えている。
  その目的はまだまだ達成されないので、当分、このサイトは続くことになる。

 (了)
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