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僕と君と明日のつづき
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細川又三良
(ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。

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012.『雪解けと恋の行方に、春を待つ』
Date: 2004.02.04
 理想的な男女の別れ方を考えると、
「今までとても楽しかったよ、さようなら」
「私も同じよ。今までありがとう、さようなら」
と、グッデイ・グッバイ――良き日に良いお別れが出来れば最高なんだけど、世の中は、人の心はそんな単純なものではない。
  関係の修復が無理なのをわかっていても別れられなかったり、気持ちの整理がつかずにズルズルと執着したり、嫌がらせのために別れを拒否したり、男女の別れ際はいつも心が揺れ、乱れ、そして、いくつかの傷と共に終わる。
  そんなことを考えていると、理想的な男女の別れと言うのは、大雪が降った後、日陰に残った雪がいつの間にか消えて無くなるような別れじゃないかと思ってしまう。
  つまり、自然消滅がベストと言うわけだ。
 
  メールも電話も徐々に少なくなり、会えない日が続き、そのうち、ふと会えなくても大丈夫な日がやってくる。連絡しないといけないな、と思いつつも、ついめんどくさくなり、そのままいつの間にか相手の存在を忘れてしまう。
  それが自然消滅のパターンだろう。
  どちらかが連絡を取れば、以前のように戻れるかもしれないのに、どちらとも連絡しようとせずに終わってしまう。
  数ヶ月が経って、ふと携帯電話を鳴らすと「この電話番号は現在使われておりません……」とお馴染みの無機質な女性のアナウンス。もしくはメールを送るとメイラーデーモンからのunknown userとのお返事。
  自然消滅のメリットは、何も決断しなくていい気楽さ。
  別れの言葉も、別れの決意も、告白のタイミングも苦しいことは何も考えずに、ただ、時を過ぎるのを待てばいいだけ。唯一、淋しさを紛らすことさえクリアできれば、すんなりと毎日を過ごすことが出来る。
  中には“連絡しないことを決断した”と言う、ひねくれた人もいるんだろうけど、それは決断ではない。それは現実を直視しないで問題を先送りしただけのことだ。
 
  しかし、僕の場合、恋愛において自然消滅がほとんどない。
「ああ、これ、僕が放っておけば終わる恋だよな……」
とわかっていても、ちゃんと別れ話をせずにいられないのだ。
  逆に、
「ああ、たぶん、彼女はこの先、僕とつき合う気はないんだろうな」
と思っても、静かに自分から消えることはせずに、彼女を問い詰めて彼女自身の口から別れの言葉を言わせてしまう。
  どちらにしても僕は不幸な人に違いない。
  たとえ、一時的にしろ、好きな女性と別れるのだ。
  自分から別れを切り出すのも相手から告げられるのも、精神的に大きなダメージを受けるし、数日間、胃に丸い大きな石が転がったような気分になる。
  それでもきちんとケリをつけたがるのだ。
 
  恋人じゃなくても、友人として付き合っていけばいいじゃない? と僕に助言する人もいた。
「恋人になるぐらいだから友人にだってなれるはずでしょ?」
と、ごもっともな話なんだけど、たぶん、僕はダメだろう。
  元彼女と友達になるケースもあるけれど、それは相手にダンナや彼氏がいたりなど、やむを得ない場合で、友達と言いつつも身体の関係がある女性だけなのだ。
  僕の場合、本気で好きになってしまった相手と別れてしまうと、友達になることを拒否してしまう。友達として付き合うには、愛が強すぎて、その先もずっと傷付いてしまうような気がするからだ。だったら、きっぱりと別れてしまった方がお互いに良いと思ってしまう。
  それは僕の中に強固な壁があり、彼女でもない女性に無防備な姿をさらけ出したくないし、別れた女になど優しくするメリットはないと思ってしまうからだろう。
  優しさも弱さも甘えもすべて、それを見せるのは、今現在、付き合っている恋人だけ。 親身になって話を聞くのも、思いっ切り笑わせるのも、自分の考えを洗いざらい話すのも、すべて本当の彼女しかしたくないのだ。
  たとえ、元彼女でも女友達にはそんなサーヴィスなんてするものか――と、それが偽らざる僕の本音なのだろう。
 
  だから、僕は恋愛を自然に消滅させるのではなく、自らの手で終わらせようとする。
  別れる彼女には、付き合っている時に送ったメールや電話番号などをすべて消してくれと頭を下げてお願いする。
「すごく大切なメールをもらったから、取っておきたい」
  時々、そういう女性もいるけれど、そのメールに綴った想いはその時だけのもので、時が過ぎてしまえば、すべては幻になってしまう。だから、綺麗に消して成仏してやってくださいと、重ねてお願いするようにしている。
  このサイトも一般的に公開しているものだから、見ようと思えば見られるけれど、もう必要がないのだから、一切見ないでくれと伝える。
  僕を愛してくれた気持ちがほんの少しでも残っているのなら、僕の最後の望みを聞いて欲しい――そして、すべてをゼロに戻して欲しいと願う。
 
  そう、冬も終わりに近づき、雪がその姿を変えて消えていくように、僕の想いもちゃんとこの世から消し去って欲しい。
 
  二十代の前半の頃、きっと、歳を取って大人の恋をするようになったら、自然消滅も受け入れられるんだろうな、と思っていたけれど、どうやら僕はいくつになっても変わらないみたいだ。
  文章の最後にピリオドがあるように、映画が終わればエンドクレジットが流れるように、音楽にもフィナーレがあるように、恋愛も終わりをキチンと付けたい。
  さようなら。
と呟いて、雪解けと恋の行方に、春を待つ。

 (了)
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