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細川又三良 (ほそかわ・またさぶろう)
1972年愛知県生まれ、男性。
art direction & design
Instant Design Works
photograph
matasaburo EXHIBITION |
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| 009.『ウイニングイレブン狂想曲 前半戦』 |
| Date: 2006.04.13 |
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僕は昔からゲームがあまり好きではない。
ドラクエやファイナルファンタジーも一度もやったことが無いし、他のゲームもちょこっとやるだけで熱中することはない。
それは単純に反射神経や根気の問題ではなく、時間がもったいないと思うからだ。ゲームをやっている時間があるのなら、その時間を他のことに費やしたいと思っている。
そんな僕がハマってしまったゲームがあった。コナミが発売しているサッカーゲーム、ウイニングイレブンだ。しかも、最新版ではなく古いバージョン。その理由は新しいのは値段が高くて、古いのは中古屋で五百円程度で買えたからだった。
そして、僕はそのゲームを一人で遊ぶことはない。
僕が楽しんでいるのは二人協力プレイだ。二人で同じチームのプレイヤーを操作して、コンピュータのチームと戦うのだ。
リナの良いところは、割と従順で物事をあまり深く考えないことだった。
ある日、僕は彼女にPS2のコントローラを握らせて、
「ウイイレやろうよ」
と言った。二人で遊べるのを喜んだのか、リナは素直にコントローラを手にした。
初心者におけるウイイレの壁は操作方法にある。
○がパス、×がショートパス、□がシュート、△がスルーパスなんだけど、慣れないと、とっさにどのボタンを押したらいいのかわからなくなる。
最初、僕もなかなか慣れなかったから、リナも苦戦した。それでも、何回か試合を重ねるうちに、徐々に操作できるようになって、一応だが、まともにプレーすることが出来るようになった。
しかし、本当の問題はこれからだった。
女という生き物は、多くの場合、サッカーを見てはいても、本当の意味でサッカーを観てはいないのである。よく言う、オフサイドを知らない、などのルール面の他に、サッカーというプレイの魅力がどこにあるのか感じてないのである。
文章で説明するのは難しいが――例えば、相手チームの攻撃を止めて速攻に出る場面を想像してもらいたい。
プレスを掛けて、相手のパスミスを誘い、ボランチの位置でボールをカットして、サイドバックの上がりを待ってパス、一旦、中央に戻して、ワンツーで相手のディフェンダーを置き去りにする。そして、サイドを駆け上がってセンタリング、フォワードがタイミングに合わせてボレーシュート。
サッカー好きの男の子なら、これだけで、ああ、稲本→三都主→俊輔→三都主→高原とか、日本代表の左サイドに合わせて何気に想像できるだろう。
しかし、サッカー好きではない大抵の女の子の場合は「うーん」なのだ。ボールを持つ人の動きは目で追えるものの、ボールに直接絡まないオフ・ザ・ボールでの中田、柳沢、福西などの動きはまったくわかっていない。
きっと、日本の多くの女性が日本代表戦に限定して、ゴールチャンスに「わー」、ピンチに「きゃー」を楽しんでいるだけなのだ。
リナもその一人だった。
ワールドカップや国際大会での代表戦は周りも盛り上がっているから観るものの、それ以外、例えば、名古屋グランパスエイトvs川崎フロンターレの試合などは、チームに愛着もないし、選手も知らないし、まったく関心がないのである。それはジダンやベッカム、ラウルやロベカルなどが所属するレアル・マドリードとロナウジーニョがいるバルセロナとの伝統のクラシコでもあまり変わらない。
つまり、単純にサッカーというスポーツを心から楽しんで無いのである。
そんな女性とサッカーゲームをすると、おのずとひどい試合となる。
自陣からポンポンとロングボールが飛び出し、無理な位置からシュートが繰り出され、中盤は無理なドリブルからボールを取られ続ける。
偶然、パスが繋がってシュートが入ることはあっても、ほとんどの時間、中盤を完全に支配されてボール・ポゼッションは40%台に落ち込み、結果、5−0の大差で負けてしまう。
他にも、右サイドに張っていて「パス、右、右」と指示しても、彼女は何を思ったのか、自陣にバックパスをしてしまう。そう、ウイニングイレブンの場合、横スクロールで右と左サイドは画面の上と下になるのだ。つまり、彼女はフィールド上の右サイドと画面上での右側を間違えていたのだ。
僕は彼女がミスする度に、イラついて無意識のうちに彼女を叱っていた。
世の中の多くの男性はサッカー中継を観ている時、人が変わったようにテレビの前で怒り狂ったりする。
「バカ、ちゃんと上げろよ、加地」
「また、三都主かよ、このアホが」
「高原〜、何で外すんだよ、死ね」
普段、大人しい人でも言葉は汚くなり、大声を出すようになる。そう、僕はその調子であまり深く考えずに彼女を叱り飛ばしてしまったのだ。
それでも、リナは黙って耐えていたんだろう。
しかし、ある日、ゲームの途中で黙って手を止めてしまった。
インターナショナルカップのベスト16を賭けた日本代表vsイングランド代表の試合だった。僕が操作する中田からの決定的なスルーパスを、リナが操作する久保が外してしまった時だった。
「何で、どフリーで外すんだよ、このバカッ!」
直後、イングランドの速攻が始まる。賢明に自陣の選手を操作して、反則スレスレのスライディングでクリアする。ボールがタッチラインを超えた隙に、ふと、黙り込んだリナを向くと、瞳から涙が一線こぼれ落ちるのが見えた。
ああ、僕はやってしまったのである。
これが男同士、例えば弟だったら、どれだけ汚い言葉で言い争っても、試合中もその後もお互いにそんなに気にしない。ミスするのは当たり前だし、それを率直に言い合うのもチームが勝つ為に必要なことなのだ。
しかし、女の子は違うのだ。これはただの遊びだとわかっていても、その汚い言葉は耳に残ってしまい、ひどく叱られた印象だけが感情を揺れ動かしてしまうのである。
僕はこの時、女子バレーボールチームを率いる男性監督の言葉を思い出した。
「女の子は難しい」
いや、ホント、難しいのである。
男性以上にメンタルの振れ幅が大きい女性は、単純に厳しくしてもダメなのだ。頭ごなしに非難しても萎縮させて動けなくさせるだけである。かと言って、何も言わなければミスは直らない。
僕は頭を抱えて、このままウイイレをすることで二人の仲が悪くなるならば、このゲームを止めることも考えた。
(※『後半戦』につづく) |
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